次世代ウェブ
- 作者: 佐々木俊尚
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/01/17
- メディア: 新書
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次のウェブはこうなる、ということよりは、今のウェブで起こっている現象について、いろいろな例を挙げながら説明している本。
Web2.0は決してGoogleから始まったわけではなく、どちらかというとアメリカや日本で同時多発的に起こった、言わばウェブの「進化の必然的帰結」である。
本書ではまず日本のWeb2.0の「源流」として2つのベンチャー企業の例を紹介する。
1つ目はクインランドという神戸のベンチャー企業で、もともとは中古車販売の会社である。
この会社は優秀な営業マンの行動を徹底的に観察することによって「暗黙知」をデータベース化、各営業マンに対して「今日はどのお客に対して、どのような行動をとるべきか」といった指示が毎日なされるという、非常におせっかいなシステムを作り、この結果、全店で順調に業績が上がっていったという。
クインランドはこの経験を元に、地域ポータルやゲームポータルなど、様々なWeb2.0ビジネスに乗り出していった。
2つ目はオウケイウェイブ。Q&AサイトのOKWaveを運営する会社であるが、この会社はサイトで荒らし行為を行うユーザに対してログイン停止をする際、なんと社長自らが説明の電話を入れるという。コミュニティサイトを成功させるためにはそこまでしてユーザと向き合っていかなければいけないということだろう。
Web2.0の申し子のように言われているGoogleやAmazonだが、彼らがやっているのはプラットフォームという土地を提供してその上で開発者にアプリケーションを作らせ、そこから税金を徴収するということ。この本では「地主制度2.0」と言っている。
Web2.0の世界で本当に成功するためには「地主」にならなければいけないのだ。
あと、情報大航海プロジェクトについての話が面白かった。
よく「日の丸検索エンジン」という言い方をされていて、僕も「日の丸検索エンジン?そんなの成功するわけないよ」と思っていたのだけれど、実際にはGoogleに対抗して国産検索エンジンを作るというような話ではないらしい。
では本当のところはというと、自然言語に限らない様々なデジタルデータ、例えばICタグの情報とか、センサ情報、我々の行動記録まで、ありとあらゆるデータを整理して検索するための技術を育成するための壮大なプロジェクトなのである。
これらのデータに対する検索技術を高めることで、日本の産業全体の底上げも可能になると著者は言う。
確かに経済産業省が行ってきた巨大プロジェクトは失敗例が多いけれども、この情報大航海プロジェクトはうまく行って欲しい。
ウェブ進化論の梅田さんはかなり理想主義的なところがあるけれど、佐々木俊尚さんはそれに比べると現実的。梅田さんはあまりにGoogle賛美なんだよなぁ。
ウェブ進化論の次ぐらいに読むといいかも知れません。