過剰と破壊の経済学
過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 042)
- 作者: 池田信夫
- 出版社/メーカー: アスキー
- 発売日: 2007/12/10
- メディア: 新書
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著者のブログは最近よく読んでいるので内容は大体想像がついたが、それでも面白かった。
時間を忘れてつい読みふけってしまう。「ウェブ時代をゆく」もそんな感じだったけど、1〜2時間程度で読むつもりが、この本にはほぼ丸一日かけてしまった。まあ、それでも昔よりずっと速いと思うけれど、フォトリーディングだいぶ忘れたなあ。
ちなみに序文が著者のブログに掲載されていて、序章も著者のサイトで読めるので、ぜひ読んでみて下さい。
半導体内部のトランジスタの集積密度が18ヶ月でほぼ倍になるという「ムーアの法則」によって起こっている変化は、コンピュータの価格対性能比が飛躍的に伸びるということである。
コンピュータの処理性能が上がれば、全ての情報がコンピュータで処理されるようになる。
しかもその処理コストは限りなく安くなるので、情報という資源がつねに供給過剰の状態になり、情報の価値が急激に下がる。そうすると相対的にその他の資源の価値が上がる。そのうち最大のものは人間の時間である。
このあたりの見解は梅田望夫氏とも一致している。というか、ネット業界ではもう常識ということだろうか。
また、これまでのパラダイムが古くなり、新しいパラダイムが台頭する。大型コンピュータからミニコン、ミニコンからパソコンへ主役が変遷し、プラットフォームがOSからウェブへと移る。
技術開発の初期には分業が難しいので垂直統合型がとられるが、技術が普及すると互換性のある低コストな「破壊的イノベーション」が登場する。
破壊的技術は最初、性能や品質面で先行者に劣るので、先行企業は既存技術を高級化して「持続的イノベーション」で対抗しようとするが、ムーアの法則による価格対性能比の向上によって破壊的技術の性能が持続的技術に追いついてくると、価格競争で破壊的イノベーションの勝利となる。
日本メーカーはかつてアメリカの重厚長大技術に対する破壊的イノベーションで成長したが、今は持続的技術を守る立場となっている。今破壊的イノベーションの先頭に立っているのが中国である。将来もしかしたら、日本の製造業は消えてしまうかも知れない。
梅田氏とは対照的に悲観的なことが多い。とくに日本の製造業や行政に対して。
技術的に細かなところで誤解とかあやしい部分(例えばソフトウェアは必ずしも半導体のようにリニアには伸びていかない)があったりするけれども、その視点は非常に的を得ている。
読書課題、残り98冊。