辻仁成「グラスウールの城」

読み終えたのは先週の土曜だけれど。
近所の古本屋で先月買ったもの、1日あれば充分に読めてしまうぐらいの分量だけれど、なかなか読む時間がなくて3週間以上かかってしまった。

表題作 グラスウールの城

音楽システムのディジタル化が人にとって本当に心地良い音楽をなくしてしまったというテーマに、やはり音楽に携わっている人だなということを感じる。

イメージっていうのは視覚だと思うけれど、この小説からは聴覚に訴えるイメージが次々と出てくる。
ラストの流氷のシーンなんかを読むと、本当に「無音」の世界を体験してみたくなる。

ラストに流氷のシーンっていうのは三浦綾子の「続・氷点」もあるな。
僕は流氷を実際に見たことはないけれど、厳しい自然を目にすると人は自分が生きていることを強く感じるんじゃないだろうか。

ところで、可聴周波数をカットしてしまったことで心地良い音楽じゃなくなったというのは、他にも言っている人がいるみたいで、確かアスキーの創業者の西和彦が雑誌かなんかで、DVDで可聴周波数外の音も含めてやれば、システム丸ごと入れ替えが起こるから景気が良くなるみたいなことを言ってたように思う。
オーディオに詳しい人は結構知っていることなんだろうか? 僕はオーディオに詳しくないので良く知らない。
でも今の技術なら充分にできることなんだよなあ。

ゴーストライター

もう一編の作品。
これは一人称*1で書かれた作品。
こういうのを読むのは初めてなので新鮮な感じがした。
気が弱いところとか、主人公とは近いところがあると思うので、結構すんなり入っていけた。
ところで、主人公は男だけれど、これを女の人が読むとどんな感想を持つんだろう?

*1:主人公が「君」