ウェブ社会をどう生きるか?

最近、西垣通の本を何冊か読んでいます。その1冊目についての感想。

ウェブ社会をどう生きるか (岩波新書)

ウェブ社会をどう生きるか (岩波新書)

この本のほとんどの部分は、ウェブ2.0ウェブ進化論(著者によれば、ウェブ礼賛論)に対する批判になっている。


ウェブ2.0の根底には機械によって知を整理、統合できるとする考えがあり、かつて失敗した人工知能の試みにも似たもので、そのさらに奥にはユダヤキリスト教の考え(神は自分の姿に似せて人間を作った。今度は人間が自分の姿に似せて知能を持つ機械を作るのだ!)があると著者は説く。


そもそも情報とは生命が存在して初めて生まれるもの(生命情報)であり、その意味を解さない機械が、知を整理・統合することは不可能であると結論付ける。


ましてや、日本のウェブ礼賛論者*1の言っていることは、米国万歳、グローバリズム万歳といった古臭い古典的進歩主義であり、それがもたらすのは決して明るい未来ではない(例えば、アメリカ的格差社会とか)。

彼らの本音はグーグルやアマゾンといった米国のウェブ2.0企業のおこぼれに自分達もあずかりたいといったところではないだろうか。


そのようなウェブ礼賛論者達に日本は迎合してはならない。というのが著者の主張。


すごく深い哲学的洞察をしていて面白いのだけれど、タイトルから想像されるような、「我々個人がウェブ社会でいかにうまく生きていくか」といったことについては全く書かれていないのは少し残念。

まあ、本のタイトルなんて無意味ってことは、少しでも本を読んだことのある人なら常識だと思いますが。出版社(編集者?)の思惑があったんでしょうねきっと。


しかし、ウェブ進化論だけ読むのもいいが、こちらも読んでみるといろいろ考えさせられていいと思う。

*1:いうまでもなく、その筆頭は梅田望夫